手紙(小澤征爾「 僕の音楽武者修行」へのオマージュ)


拝啓  まだ雨の季節には至りませんが、アイスを求める気持ちが大きくなる真夏のような日も増えてきましたね  お元気ですか


僕はいまベランダでこの手紙を書いています。
時刻は午後の6時34分です。

空が綺麗な色をしていたので
ベランダにでてあなたへの手紙を書いてみることにしました。

僕がここに住み始めてるようになってからしばらく経ちます。ということは、あなたにお会いしていない時間もそれだけ積もったということですね。

僕は
この場所に慣れることなんて一生ないかと思っていたのですが、いまではここから見える景色がとても好きです。まるでずっと前からここで育ったみたいだ。


あなたのほうはいかがですか。
猫は元気にしていますか。前に僕は彼がよく海で漁師から魚を奪っている場面を見かけました。ちょっとは叱っておいた方がいいと思います。彼によろしく。僕が元気なことも伝えてください。きっと分かると思うから。


あ、もう日が暮れてきました。
さっきまでは薄い紫色だったんだけどな。
今は僕の真正面に月だって見えます。あなたの家からもよく見えますか?

またお便りを書きます。

お元気で。
来週僕は船でヨーロッパに行く予定です。
バイクを持って、あちらで指揮のコンクールにでるつもり。


それじゃ。


S.Oより


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