彼の名はプリズムといった。
彼は光をいつも鞄に入れて時間の中を進む存在だった。
その流れは一方通行のみであって、
決して後ろへは戻らない規則が定められていた。
その規則はプリズムが決めたことではなく、
どうしてだかは誰もわからないが、
とにかくそういうものだった。
プリズムはこの世の全ての出来事を見ていた。
鞄に携えている光とともに、
彼は全ての出来事を鞄に綺麗な包みにくるんでしまっていくことをしていた。
それがプリズムの仕事だった。
彼は過ぎ去る風の音の記憶さえ全て鞄に丁寧に包んでしまっておいた。
ある朝の雨の匂いもしまっておくこともできた。
プリズムにも、この仕事の意味はわからなかった。
彼のその仕事の対価は、その仕事を続ける限りは永遠を手にすることができるというものだった。
そういう契約だったのだ。
その仕事を
しつづける
限りは
プリズムは、し続けるのをやめたら
その対価を受け取れなくなるとして、
永遠とは何か考えるようになった
彼はそれを考えるためにも、
とりあえずその仕事をし続けることにした。
プリズムの存在は、実はこの世の誰もしらない。これを読んでいる人がいま始めて、彼の存在を認識したことになる。
彼は今も、光とともに全てのものたちを鞄に入れる仕事を続けながら、考えている。