聖堂

ある時私はヴァチカンで祈る人を見た。彼女は聖堂の窓からの光を受け柔らかに光っていた。彼女からも優しい光が出ているようだった。祈る人の想いはとても美しかった。そのようなこの世の美しいものを自分でも作りたかった。祈りの場所である聖堂をモチーフに選んだ。製作中アクシデントで予定した形とは天地が逆の作品になった。
地の祈りを天に届けるイメージで作ったものが文字通り、天と地が逆になったのだった。しかしその後も初めて作品を見た人々にそれが聖堂であるのか尋ねられた。偶然による変化を経ても祈りの場所であるという本質は残っているようだった。偶然の神秘と本質の力強さは時に我々が予想できない未来をつれてくる事がある事もまた美しく思った。作品は古くからある聖堂の様な空気を纏い始めた。古い聖堂があらゆる人の美しい祈りを重ねて集めていくように、そのような美しい存在としてこの作品がこの世に存在できたなら嬉しい。