「すべて消えてなくなる。
いつも最後にそう思う。
そうではない時を経て、
たどり着くのはいつも同じ場所。
嗚呼、またここへ来たのだと
そう、思う。見慣れた場所。」
『どうして消えてなくなった状態の時にたどり着くその場所を、最後だと思うの ?』
「この世のすべてのことわりの順序として、あるものが生まれて、そして滅びることになっているから。」
『まぁね。でも
自分がこの世から居なくなる瞬間に
えぇ、その瞬間に、
自分に関係するある事柄が滅びていない状態で続いているのと
その前に滅びてしまった状態なのと
その間には一体何の差があるのかしら
あなたが滅びた時にそれがまだ続いていたとしても、それもまたあなた無き後に滅びてしまうのでしょう。
それだったらつまり
全部一緒なんじゃないかしら?
その一瞬や、
物事が重なって自分も、誰かも、何かも、繋がったその時間が存在していたということは、それだけでもう
素晴らしい達成なのではないかしら。
あとの問題は全て、記憶を懐かしむという点での問題が残るだけでしょう。
中身自体は変わらないわ。』
「そうだね。
それにしても君の話し方はいささか
込み入りすぎているような気もする。」
『いま、カフェインが切れているのよ。珈琲を飲みに連れて行ったら、可愛い私に戻ると思う。』