そんなに長い距離をはじめて
わたし一人で越えて行くのは
人生ではじめての出来事だったわ
途中で知らない人たちが住む
団地が永遠に続く通りも越えていったわ
それはかなり前に住んだ街に似ていた
でも決定的に何か違う部分があったわ
そこには私やあなたは物語のなかに含まれていなかった。
そのあとには、霞みがかった田んぼの風景を通り抜けていった。
そこで私は記憶の中にとてもそれと似たもの、あるいはその風景で呼び起こされるある種の感情の種類が似ている記憶があることに気づいたんだけれど
どうしてもそれを特定することはできなかった
なんだか懐かしいような
心細いような気持ちになって
少しそれは感動のようでもあったのだけれど
その時わたしは時速60キロで走っていた
そう、とうに法定速度は超えていた。
そこは完全に私1人で、
そしてあなたのことを考えていたわ。