ヘンゼルとグレーテル


「鳥になってみたいと思うことがあるんだ」


「どうして? 飛んでみたいからなのかしら」


「違うんだ。
風に吹かれて
街を見下ろして
僕がひとりで飛んでいる。
周りには誰もいない。
虫もいないし、雲だっていない。
ただただ透明なまっ黒の空気のなかに
僕だけがいるんだ
僕はとにかく飛んでいる
僕と風だけが居る
でも下には明るい街が見えるし
上には星だって光ってる
月も居るだろう
そういう孤独なところに
僕は行ってみたいんだ

わかるかい?」


「そうね、
ぜんぜんわからないわ。」